高岡仏壇の金具の色について

高岡仏壇や城端仏壇などでは、表金具には煮色(にいろ:薄茶色のような色)、内金具には素材である真鍮ままのものや金メッキが施されたものなどが昔から主に使われていますが、ここでは表金具について書いてみたいと思います。

この「煮色」というのは読んで字のごとく、地金(ここでは金具)を煮て酸化させることによってできる色のことです。このため、地金の組成により色は異なります。
この点が通常の着色とは大きく異なる点でしょうか。

お仏壇を製造する側にとってはこの煮色の金具はやっかいなもので、金具に釘を打ち込む際にかなづちが少しでも金具をたたいて(触れて)しまうと色が変わってしまいますし、必要以上に釘を打ち込むと釘の周辺の金具が窪み、やはり金具の色が変わってしまいます。また、釘が金具にすれた場合も同様で金具を取り付ける際にはものすごく神経を使います。

新米の職人がこの煮色の金具を取り付ける仕事を与えられた時は、必ず何度か「痛い目(失敗)」にあいます。ベテランの職人でも集中力が欠けた瞬間に失敗します。そして、その金具は使い物にならなくなります。ちなみに、メッキや着色したものは多少のことでは変色しないですしキズもつきにくいので、作業する側にとっては煮色よりも心理的には楽です。

先に述べましたが、この煮色は地金を酸化させて色ができるので、この地金の状態にバラツキがでる - つまり数十年経たお仏壇の金具 - の場合は色をつけ直すとしても、全て同じ色に仕上がることはありません。

このようなわけで近年では、お洗濯の場合などでお仏壇についている表金具を生かす場合は焼付けの色付けをすることが多いです。そうでなければ、表金具を全て新品のものに取り替えることとなります。当然、後者の方がコストがかかるためお客様との話し合いによりどちらを選ぶかが決まります。

煮色の金具の修理前後のサンプル

※同じ金具にも関わらず左側部分のみが錆びています。錆の原因は木材にあると考えられます
※もとの煮色に近い発色にするために、職人さんが3回繰り返して新品時の色にほぼ近づきました

修理前の煮色の金具 修理後の煮色の金具
修理前の煮色の金具 修理後の煮色の金具
修理前の煮色の金具 修理後の煮色の金具
修理前の煮色の金具 修理後の煮色の金具
修理前の煮色の金具 修理後の煮色の金具
<修理前の煮色の金具>
<修理後の煮色の金具>

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仏檀修理アドバイザー



富山県内仏壇店での仏壇製造・修理現場勤務をきっかけに独立。気がつけば20年以上お仏壇の修理・お手入れに携わってきました。

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